「地域にお金を残したい」岡崎酒蔵の太陽光発電
長野県上田市にある岡崎酒造。360年以上の歴史を持つこの酒蔵は、「信州亀齢」の銘柄で知られています。

岡崎酒造では2020年から、NPO法人上田市民エネルギーが運営する「相乗りくん」に参加し、酒蔵の屋根に太陽光パネルを設置しています。
今回は社長の岡崎謙一さんに、その背景にある想いを伺いました。
「環境を守ろう」というよりも、「地域でお金を回したい」

――「相乗りくん」に参加されたきっかけを教えてください。
もともと藤川さん(上田市民エネルギー代表)とは知り合いだったんですが、正直に言うと、環境派の人だなと思って最初は少し距離を置いていました。環境活動に関わると、「ずっとマイボトルを持ち歩かなきゃいけない」と怒られるんじゃないかとか、「我慢したり制限された生活をしなきゃいけない」という感覚があって。今でもその気持ちは少しあるかもしれません。
――その考えが変わったのは、どんなきっかけがあったのですか?
上田市民エネルギーが主催した講演会に参加したときですね。そこで藤川さんの話を聞いて、「環境にいい選択をすれば、外にお金が出ていかない」と気づいたんです。
僕の視点は「環境を守ろう」というよりも、「地域でお金を回したい」というところにあります。酒蔵って、地域と共に生きていく運命なんですよ。農家さんがいなくなったらお米が手に入らなくなるし、飲食店や酒屋さんがなくなったら売る場所もなくなる。そう考えると、自分だけが良ければいいという価値観でいてはうまくいかない。
太陽光発電って、考えてみれば「タダ」じゃないですか。パネルの設置費用はかかるけれど、日常的には太陽の光が電気を作り出してくれる。海外に石炭代とかを払わなくても、地域でエネルギーを回せる。経済という視点で見たときに、環境にいい選択がそのまま地域を守ることにつながるんだと腑に落ちて、参加を決めました。
酒造りとエネルギー、そして「罪悪感」
――酒造りでは、どのようなところでエネルギーを使っているのですか?
まず、原料のお米を蒸すのにボイラーで灯油を燃やして蒸気を作ります。麹を作る部屋は30〜40度に保たなければいけないので、そこにも電気が必要です。蒸したお米を冷ましたり、発酵中のタンクの温度をコントロールしたり、出来上がったお酒を冷蔵庫で品質管理したり……いろんなところでエネルギーを使っています。
そうやってエネルギーを使っていることに対して、「罪悪感を相殺したい」という気持ちがありました。「お酒を売ることで地域に貢献している」と言いながらも、資源を消費してしまっている部分がある。それに対して、できることをやっておきたかったんです。
――環境や地域への意識は、いつから芽生えたものなのでしょうか?
酒蔵という仕事の影響は大きいと思います。350年以上続いてきた歴史がある中で、僕は今、通過点にいるんですよね。自分の代で終わりというよりは、次の世代にもいい状態でバトンを渡したい。だから未来から逆算する視点で「今」を考えるようになりました。

正直に言うと婿養子として岡崎酒蔵に入ったとき、先代に対して少し恨み節があったんです。潰れかけの状態でバトンを渡されて、「ちゃんとやっておいてくれれば、こんなに苦労しなくて済んだのに」と思いました。それを経験したからこそ、自分が同じことをしたくないと強く思ったんです。今やるべきことをやっておかないと、次の代が引き継いだときに「何やってたんだよ」と言われてしまうんじゃないかと。
だから、おいしいお酒を造るのは当然として、地域や環境に対しても、やれることは全部やっておこうと思いました。未来の世代から「怒られたくない」というのが、正直な気持ちかもしれませんね。
「相乗りくん」という選択
――「相乗りくん」の仕組みについて、改めて教えてください。

うちは「屋根オーナー」として参加しています。初期費用ゼロで屋根を貸して、太陽光パネルを設置してもらう形です。パネルに出資したい「パネルオーナー」さんがいて、売電収入をシェアする仕組みですね。
正直なところ、自分たちでパネルを設置して、自分たちの収入にしてしまうこともできたんです。でも、「相乗りくん」の仕組みに乗ることで、岡崎酒造だけで完結せずに地域のつながりが大きくなる。 そこに参加する意義があると思いました。屋根を貸すだけで、地域のエネルギーを回す仕組みに参加できているわけですから。
これから参加を考える人へ
――最後に、「相乗りくん」への参加を考えている方にメッセージをお願いします。

上田という場所の強みは、日照時間の長さだと思います。先日、富山に行ったんですが曇天が続いていて、上田との違いを感じました。
上田に住んでいると、晴れが当たり前になっていて、ちょっと曇っただけで「今日は天気悪いな」と思う。でも、それってすごく恵まれた環境なんですよね。この立地だからこそ、太陽光発電の価値を発揮できる。ここにあるものを生かさない手はないと思います。

山を切り開くメガソーラーみたいなのには反対ですが、屋根の上でできる範囲のことなら、やった方がいいんじゃないかなと。声を大にして言いたいですね。
取材を終えて
岡崎さんのお話を聞いて印象的だったのは、「環境のため」というよりも、地域経済や次世代への責任という文脈で太陽光発電に参加されていたことです。
「環境にいいことをしよう」と言われると、どこか身構えてしまう人も多いかもしれません。でも岡崎さんの視点は、「地域にお金を残す」「次の世代にいい環境を残したい」という動機から始まっています。
次の世代まで見据えた「長期的な目線」と、「地域と共に生きる」という覚悟。環境問題を「自分ごと」として捉える一つのヒントになるように感じました。
NPO法人上田市民エネルギー
「相乗りくん」についての詳細は、上田市民エネルギーまでお問い合わせください。
取材協力:岡崎酒造社長 岡崎謙一さん
取材・文:上田市民エネルギー インターン 足立あゆみ


